世の中にＭＭＯ−ＲＰＧは、たくさん存在します。
それらの多くは、参加者のネット上での戦闘能力を高め、いかに自分が他者より強くなるかが、ゲームの目的になっています。すなわち、コミュニティの中には、勝者と敗者が常に存在することになり、必然的に弱肉強食的な社会ができあがります。こうしたネット上の弱肉強食的な社会は、現実の競争社会をより凝縮したものとなり得ます。

こうしたＭＭＯ−ＲＰＧは、現実社会で封印された攻撃性、暴力性をネットという仮想現実の中で表現することにより、ストレスを解消していくといった意味では有意義なのでしょうが、仮想現実で起きたことが、そのまま現実社会で表現されてしまう場合も起こってきています。
すなわち、現実と仮想現実の区別がつかなくなり、ネット上で学んだ暴力性を、そのまま現実社会で表現してしまうという事も実際に起こってきています。

「女神幻想ダイナスティア」は、弱肉強食的な既存のゲームとは、まったく異なるコンセプトの元に開発されたＭＭＯ−ＲＰＧです。
「女神幻想ダイナスティア」のコミュニティの中では、暴力や戦闘といったものは否定されます。従って、コミュニティの中で起こるさまざまな出来事の解決には、非暴力的な表現を工夫しなければなりません。
このためには、「意見の違いと人格の優劣を混同しない」、「むやみに他人をジャッジしない」などの「個々の違い」に対する寛容さが必要になります。
これは、今後進むであろうと考えられている、「あらゆる可能な視点を並列させて考える」ヴィジョンロジック的社会をネットという媒体の上で、先取りした試みとも言えるでしょう。

シークレットガーデンでは、これまで2年半「女神幻想ダイナスティア」を運営し、さまざまなノウハウを蓄積してきました。
今後、「女神幻想ダイナスティア」がどのように進化していくのか、あるいは、そこから実社会に向けてどのようなメッセージが発せられるのか、期待を持って見つめていきたいと思っています。

アライアント国際大学日本プログラム講師
向後善之

１９５７年神奈川県に生まれる。石油会社勤務後、渡米。
カウンセラー・米カリフォルニア統合学大学院研究所(CIIS)卒、統合カウンセリング専攻科。
米サンフランシスコ市営のRAMS(Richmond Area Multi-Servises)他でカウンセラーとして、精神病から神経症までのクライアント及び、薬物・アルコール依存者の個人・家族・グループセラピーを担当する。
カウンセリング心理学修士・エクレクティックセラピスト・工学修士・自己心理学・人間性心理学を理論背景に、サイコシンセシス・ゲシュタルトセラピー・ハコミセラピー・トランスパーソナルセラピー・認知行動療法等。
サンフランシスコ在住日本人対象の、薬物依存からの回復サポートのためのグループ「どんぐり」を設立、ファシリテーターを勤める。Journal of Humanistic Psychology等に論文発表。
帰国後、帝京平成大学臨床心理学科専任講師、帝京平成短期大学講師。帝京平成大学・短大学生相談室カウンセラー・日本トランスパーソナル学会常任理事・ ジャパニーズメンタルヘルスネットワーク幹事・創立メンバー。
著書に「わかるカウンセリング（コスモスライブラリー）」