「価値とコミュニケーションの天秤」
よく「無人島に一つだけ何かを持っていけるとしたら、あなたは何を持っていきますか?」というような心理テストみたいなものがあったりする。そういう極限状態においては、貨幣もその価値を持たないし、無人島がどういう環境かというような情報も無いので、そこでの生活に対処的に必要となるモノをあらかじめ予測して持っていくことも不可能だろう。何を持っていこうかと頭の中でグルグル考えていくと、なんだか「無人島ならば、話相手が欲しいなぁ、携帯電話でも持って行くか……。え?電波届かない場所なの?うーん、人間は持っていけないしなぁ」なんてことを思いついたりする。 人間はコミュニケーションが欲しくてたまらない動物の一種なんです。 MMORPGというゲームジャンルは、「ゲーム性よりもコミュニティ性」と言われたりする。しかしながら、現実世界の模倣(貨幣や物質的価値の導入)をすればするほど、そこに発生するコミュニティは「見る者、見られる者」という二者間のやりとりを延々と繋ぎとめることで日が暮れる「なんか疲れるコミュニティ」になっていく。それは、本来の「価値」というものが持つ力が、単に「見せるという使途しかない奇妙なモノ」へと変貌しているからだ。 もちろん、その中で心の通い合いを望むことはできる。けれど相手がそれを望んでいるかは、ちょっと難しい。
『ダイナスティア』について言えば、ゲームシステム的に「なんか疲れるコミュニティ」に真っ向から勝負を挑んでいる稀有なコンテンツだと思う。なにも気負わずにこの世界に入ることを許してくれている。 そして、「価値」ということについて、現実世界の劣化した模倣ではなく、プレイヤーキャラクターの立ち居振る舞いであるとか、人への心遣いであるとか、そういった「目に見えずしかし心に刻まれる」ものに重きを置いている。
人がロールプレイせざるを得ない世界観という点では、『ダイナスティア』は名実ともにMMORPGなのだと思う。しかし、そこで培われる人と人との関わり方=コミュニケーションは、いつしかロールプレイの範疇を超えて、プレイヤー同士の心を通わせるきっかけとなっているのだ。 正直のところ、流行りのゲームのような3Dでグリングリン動いてエフェクトバリバリの映像が期待できるゲームではないわけだが、コミュニティ要素という点では、それらを補って余りある経験ができるのではないか(誉めすぎすか!そうですか!)。 自分にとっても、オンラインゲームにおけるプレイヤー同士のコミュニケーションについては、自らコンテンツを開発運営するという立場で始終頭を悩ませるべき部分であるし、『ダイナスティア』を運営するシークレットガーデンさんにとっても、(ダイナスティアだからこそ)永遠の課題となっている部分だと思う。 まあ、そんなことを考えつつ、率直に2周年おめでとうございます! そして今後も人の心に行き渡るコミュニティを提供し続けてください!
株式会社ハイファイブ・エンターテインメント 代表取締役 澤 紫臣
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澤 紫臣(さわ しおん)
ハイファイブ・エンターテインメント 代表取締役 1976年生まれ。青山学院大学卒。
5歳ころから父親の影響でPC-8001のBASICを使い始めたのをきっかけに、ゲームのプログラミングに興味を持ち、オタク心が萌芽。 学生時代、研究課題の設定に詰まっていたところ、IBMの展示会でインターネット(Gopher)に触れ、その可能性に衝撃を受け、インターネット上でゲームの姿をした教育ソリューションの可能性について研究を始める。 大学卒業後、ゲームとインターネットソリューションの融合を目指し、独自の企画案でグループウェアやビデオチャット会議システム等の企画・プロデュースを行う傍ら、コンサルタント業に従事。 2003年、ひょんなことから『シールオンライン』事業に関わることになり、ゲーム運営において、エンターテインメント性とコミュニケーション性を中心にした運営形態を推進。 株式会社 KESPI代表取締役となり、シールオンラインの商用化、ドラゴンラージャの商用化ほか、各種コラボレーションプロジェクト(モバイル版、カードゲーム版)などを立ち上げる。 KESPI代表を退任後、新たなオンラインエンターテインメント事業を推進するため、2006年2月にハイファイブ・エンターテインメントを設立。 空いた時間があれば携帯ゲーム機で何かしらプレイしているゲーム脳第一世代の30歳。 現在、「ネトゲナウブログ(http://netogenow.seesaa.net/)」を執筆中。
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